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黒い鎮魂/ブラック・レクイエム 第33回

《難民キャンプの設営(大量難民脱出)》

停戦合意が崩れたという前提でUNAMIRを大幅削減(2500人から250人)した後、さらに殺しのフリーハンドを与え、スピードアップを図る。一部過激派によるツチ族大量殺戮の劇的進行とは裏腹に、RPFと直接戦闘を交えるルワンダ政府軍は逆にRPFの火力と士気の前に圧倒され、敗走が続いた。

7月初め、RPFの勝利が決定的となるや、ツチ族の軍隊であるRPFによる報復を恐れたフツ族は、政府軍とともに壊走した。タンザニアにも80万近い難民が逃げたが、最も多く、混乱を極めたのは西の隣国、ザイール(現コンゴ)への100万を越す脱出だ。道路事情を考えればごく自然の流れである、しかし、やはり彼らは追い詰められるべくしてそこ(東コンゴ)へと追い詰められたのだという見方もまたある。何故なら、そこ――難民キャンプが連なる一帯――キブ州の地下には、世界でも有数の鉱物地下資源が眠っていたからだ。さらにそこは鉱物資源の宝庫カタンガとも隣接していた。

難民キャンプ、自然発生的であろうと、人為的であろうとそうした場所に100万を越す難民キャンプができ、何事もなしに済まされるわけはない。世界有数の鉱物資源地帯の上に時限爆弾を抱えたようなものだ。しかもそれ(キャンプ)はフツ族過激派、殺人者たちに牛耳られているとしたらだ。やがて来る掃討作戦、戦闘は目に見えている。それがもし、見えない力によるシナリオの一部だったとしたら、物語は完璧だったことになる。キャンプをベースにルワンダ国内に対して越境攻撃を仕掛けてくるフツ族掃討、根絶、国際社会に対する名目も立つ。錦の御旗はどう見てもRPF(ルワンダ愛国戦線)の側にあった。

それから2年後の96年、現実にそれは起きた。キャンプは武力攻撃によって破壊され、5、60万のフツ族難民は混乱の中ルワンダに帰還、一方ほぼ同数の過激派を中心としたフツ族は反対のコンゴのジャングルの中へとさらに壊走した。東コンゴ資源地帯は、こうして或る者たちの手に堕ちた。

ハビヤリマナの撃墜、暗殺とこうした展開とがどのように直接結びついているのかを証明するのはきわめて難しいといわざるを得ない、だがそこに何らかの関係、誰かの意図めいたものがあることは、その後の展開、結末を見るにつけ強く間違いない。その辺は、次の「モブツ」の後、「ロラン・カビラ」のところでさらに詳しく出てくる。

こうしたシナリオ、展開を実行、実現するためにはハビヤリマナの普通ではない死に方、インパクトが必要だった。それがダルエス・サラームの会議の設定も含むハビヤリマナ大統領搭乗機撃墜、暗殺だ。

■次回へ続く(時期未定)以降の原稿は現在執筆中です。出来上がり次第掲載する予定です

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